2014年2月20日木曜日

神戸大学RCUSSオープンゼミナール(2月22日他、ご案内)

皆様  from 神戸大学 都市安全研究センター 北後明彦

神戸大学都市安全研究センターオープンゼミナールのご案内をいたします。
ご参加よろ しくお願い申し上げます。

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 RCUSSオープンゼミナールは、広く社会に都市安全研究センターの活動を広く
公開するとともに、関連する各分野の皆様からの報告を通じ て、安全な社会と
していくための研究や実践のあり方を議論しています。大学の教職員・学生の
ほか、安全・安心に関心を持つ市民の方々や、コンサルタントなどの民間企業
の方々、自治体の消防・建築・地域関係の職員の皆様などが参加されています。
参加費は無料です。興味のある方はぜひご参加下さい。



<第180回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
■日時:2014年2月22日(土)14時~17時
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
     神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740
■共催:神戸市消防局

① 災害復興における参加と災害弱者の私権―東日本・アチェ・タイの制度比較
    金子由芳 神戸大学大学院国際協力研究科教授

 日本では、災害復興に関する法整備の遅れが指摘されてきた。2013年6月、東日本
大震災の経験を踏まえた法的対応として、災害対策基本法改正とともに、大規模災害
復興法、大規模災害被災地借地借家特別措置法、などの復興に関わる新法が導入され
た。これら法規はしかし、阪神淡路大震災で確立されたはずであった被災者の参加と
私権保障の理念と逆行し、国主導の復興手続を定め、私権保護を狭めるものとなっ
た。その結果、復興まちづくり事業は住民コミュニティの流出を来たし、被災者はさ
さやかな生活基盤であった借地権・漁業権・入会権などの私権を補償なくして失いつ
つあるのではないか。また被災者支援制度は住宅再建資力のある被災者層に向けら
れ、生活再建に困難を抱える被災者層を取りこぼす制度設計ではないか。主に岩手県
被災地における震災以来の継続的聴きとり調査を踏まえ、また同じ津波災害でありな
がらコミュニティ自治強化を図ったスマトラ津波後のアチェ、逆に日本法を取り入れ
国主導手続を進めたタイ南部と対比しつつ、被災者の私権の帰趨について考えます。

② 徳島における事前復興まちづくり計画の取り組みについて
    上月康則 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部教授
    井若和久 徳島大学地域創生セ ンター学術研究員

 地域継承といった持続が危ぶまれる地域においては、些細な災害であってもま
ちの持続性に致命的な影響となる恐れがあります。そのような地域 では、防災
対策もまちの活性策として取り組む必要があり、これを事前復興まちづくり計画
と呼んでいます。徳島県美波町由岐地区では、従来より 自主防災の取り組みが
全国的に有名な地域であったが、現在、ここで事前復興まちづくり計画の立案に
向けた取り組みが始まっています。本講演で は、当地区での活動、ならびに将
来世代の中学生に向けた事前復興まちづくり計画を課題とする新しい学習につい
て紹介します。


今後の予定

<第181回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
■日時:2014年3月29日(土)14時~17時
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
     神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740
■共催:神戸市消防局

① 自然災害と被災者支援
    山崎栄一 大分大学教育福祉科学部准教授

 未曽有の災害に対して、法制度はどのようにして生活保障・生活再建を
支援しようとしているのであろうか。また、すべきなのであろうか。 そして、われ
われは、将来起こりうる災害に対して どのような備えをすべきなのであろうか。
 東日本大震災に際して行われている被災者支援法制に関する提言というの
は、新たになされた提言というよりも、これまでにも絶えず問題が提起 されて
きたものが多い。いつまでたっても改善が見られないまま、東日本大震災を
迎えた。被災者支援法制はこれまでショッキングな災害を経て成 長を遂げて
きたが、果たして東日本大震災を期にどこまでの成長を遂げるのであろうか。
2013年6月に、災害対策基本法・災害救助法などの法 改正が行われたが、
あくまでも東日本大震災をベースにおいた対症療法的なモノに留まっている。
 今後は、来るべき首都直下地震、東南海・南海地震といった巨大災害に向
けた法制度の設計も求められることになるが、基本的人権あるいは民主主義
といった憲法価値の実現という「社会的・経済的弱者に優しい危機管理」であ
るとか、「地域・住民を主役にした危機管理のあり方」といった法制度の設計
コンセプトも十分あり得るし、このような設計コンセプトこそが要請されている
のではないかと考える。また、現段階においても、そういったコンセプトに立っ
た法制度の運用が求められるのではないだろうか。
 本講演では、こうした新たな設計コンセプトに立った法制度をみんなで考え
ていく、あるいは、そういったコンセプトに立って法制度を運用して くための
基本的な考え方について提示することと したい。

② 東日本大震災の心理的影響と支援のあり方
    齊藤誠一 神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授

 震災による心理的被害は短期間に解決するものではなく、回復に至る時間や経
過には個人差も大きく、一律の心理的援助では対応が難しい。具体 的には、震
災トラウマやPTSDに対する個別の対応はカウンセラーなどによりなされてい
るが、被災の程度やその受け止め方による心理的状況は 異なり、また時間的経
過とともに変化することから、それらに応じたタイムリーな支援が必要であると
いえる。より適切な心理的支援を行っていく 上で、①被災者の心理的状態を継続
的に把握し、支援のあり方を提案すること,②それらの情報を蓄積し、発信して
いくことが重要な課題であると 言える。
 神戸大学でこれまでに行ってきた阪神淡路大震災の心理的影響に関する長期的
検討の集積を踏まえ、東日本大震災の心理的影響について、時間的 経過ととも
に変化する心理的影響を被災者の視点から把握し、いま被災者がどのような心理
的状態にあり、どのような心理的支援を必要としている かを明らかにし、それ
らを外部に的確に発信し、より適切な支援を促すことを目的として、現在、東北
大学等と共同研究を実施している。
 被災者、現地派遣スクールカウンセラー、被災地学校の教員からのヒアリン
グ、及び、アンケート調査(宮城,福島,山形,栃木,茨城)を、こ れまでに
実施し、地震、津波、放射線被害の大きさ及びそれらの複合的状況により、心理
的影響や被害が異なり、援助要請の程度や内容も異なるこ とが明らかになっ
た。とりわけ「被災者と特別視されたくない心理とまだ震災からの心理的影響か
ら逃れられない状況」の葛藤的状態にあること や、被災者間でも認識や意識に
大きな隔たりがあることが特徴的である。本講演では、こうした被災者心理に適
合した支援のあり方を検討し、提案したい。

<第182回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
■日時:2014年4月19日(土)14時~17時
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
     神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740
■共催:神戸市消防局

① 保育施設の市街地避難対応力に関する研究
   ピニェイロ アベウ 神戸大学大学院工学研究科建築学専攻

 保育施設では、歩行が困難な乳幼児を預ける施設であるため、大地震、大火、
津波襲来など大規模災害時に市街地避難を行う場合、独立歩行が可 能な園児は
職員の誘導の下で歩行して避難させ、独立歩行が出来ない園児については、職員
が背負い又は多人数用ベビーカー(バギー)を用いた搬 送によって避難させる
必要がある。すなわち、職員の誘導能力や搬送能力、園児の避難行動能力があい
まってこそ、保育施設の避難対応を行う能力 が生み出される。このようなこと
から本研究では、職員と園児が力をあわせて市街地避難を行う能力を取り上げ、
保育施設の市街地避難対応力とし て定義する。本講演では、まず初めに、東日
本大震災時の津波襲来から避難を行った保育施設の事例を取り上げ、迅速な行動
につながった市街地避 難対応力の形成過程とその有効性を示し、次に、避難開
始地点から目的地までの移動に関する対応力に焦点を当て、神戸市沿岸部の保育
施設におけ る市街地避難訓練の観測調査に基づく、誘導員引率下の園児の年齢
別歩行速度及びバギーを用いた避難の際の準備時間・搬送速度など、保育施設の
市街地避難対応力を示す基礎データーの測定結果や課題について報告する。

② 未定


※上記以降は下記の日程でオープンゼミナールを開催する予定です。
●2014年 5月17日(土)14時~17時
●2014年 6月21日(土)14時~17時
●2014年 7月19日(土)14時~17時
http://open.kobe-u.rcuss-usm.jp/

オープンゼミナールについての問い合わせ先
神戸大学都市安全研究センター
〒657-8501神戸市灘区六甲台町1-1
TEL: 078-803-6437(事務室 山崎)
FAX: 078-803-6394
TEL:078-803-6440(熊崎、北後)
http://www.kobe-u.rcuss-usm.jp/contact